20141225 NO.1
◎すべての女性が輝く社会
すべての女性が輝く社会をつくることが、安倍内閣の最重要課題であるとし、そのための施策が政策パッケージとして取りまとめられ、先日発表された。

女性が輝く社会と聞いて、女性の社会進出を加速させて経済活性化を図るというのであろうかと、私自身も短絡的に思ってしまったし、また、新聞の投稿欄では、女性は昔から活躍しているではないかというものもあったりして、わかりにくい政策であるように感じるのであるが、「すべての女性が輝く政策パッケージ」を深く読み、このたびの総選挙における自民党政権公約を重ね合わせてみたところ、この政策が非常に良くできたものであることが見えてきた。

現在は、「男は仕事、女は家庭」という古い時代では当たり前であった社会制度を引きずり、違和感を持ちながらも、その制度の中で幸せを求めてあえいでいる状態にある。大学進学率を調べてみたところ、男性はバブル崩壊前40%程度であったものが55%程度に増加しているのに対して、女性は、13%程度から1990年頃を境に急増し50%に迫るまでになっている。

若者にしても、その親にしても、学歴に応じた職を求めることは当然であり、高学歴者は、男女がほとんど同様の職に就くようになってきている。このような状況下では、寿退社やガラスの天井(性別などを理由にした昇進阻害)などの撤廃はもちろん、家事、子育て、介護などへの男性の参画が欠かせないものとなってくる。

私は、夫婦のどちらかが家庭を守り、子育てをするのが良いと思っていた。出産から母乳育児など、女性にしかできないものであることから、そのまま女性が家庭を守っていくことが自然な流れであると、今も思っている。が、そんなことを言っていたのでは、現在の社会情勢に対応することはできない。

すべての女性が輝く政策パッケージでは、次の6項目の課題、施策を掲げて、すべての女性が日々の暮らしに生きがいや充実感をもって家庭・地域・職場で輝くことのできる社会の実現を目指すとしている。
1.安心できる妊娠・出産・子育て・介護
2.職場における活躍
3.地域における活躍、起業
4.健康で安定した生活
5.安全・安心な暮らし
6.人や情報とのつながり

加えて、「女性の視点から見て暮らしやすい社会の制度や仕組みをつくることは、同時に、女性も男性もともに輝く社会、ひいては、妊婦、子ども、若者、高齢者、障害のある方、ひとり親として世帯を支えている方など、すべての人にとって暮らしやすい社会をつくることでもある。」としている。ようするに、社会のシステムを現在、そして将来に合ったものにつくりかえようとしているのである。

女性の活躍を推進することを指して、女性を家庭から引き離すことに躍起になって、世界がうらやんだ「妻であり母であることの価値をどこよりも高く認めた日本文化」を自らかき消そうとしているという識者もいる。私も、家を守る妻・母の存在が理想であると思っている。識者の言うところの世界と同じように、うらやんでいるのである。ただし、近づけようとする気があるのと無いという点では違っている。素晴らしい日本文化をかき消す気など、全くない。

すべての女性が輝く政策は、新たな女性像、イデオロギーを作ろうとしているのではなく、現実論として、職場に勤務する女性、家庭で仕事をする女性、専業主婦、求職中の人など、様々な立場にある女性にスポットを当てて、そのすべてを良い方向に導こうとしている。それも、欲張って何もかも一度にというのではなく、出来るものから取り掛かるというのであるから、実現性があり、高く評価できると思っている。

ただ一つ気にかかるのは、この政策パッケージには家族という概念が見当たらない。どうであろうかと思っていたところ、自民党政権公約に三世代同居支援が付け加えられた。高齢者世代が若い世代の子育て支援を行うための環境整備に向け、イクジイ・イクバア支援を行うとともに、三世代同居世帯への支援策を講じるとのことである。三世代同居での子育て、介護は、増大し続ける社会保障費対策のために残された最後の手段であると思っている。大いに期待するものである。


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