『今治西部丘陵公園整備事業』
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今治西部丘陵公園については、私が思っている以上に知られていないようであり、計画事業費70億円、面積34.9haの、この公園整備を多くの方に知っていただきたいし、ご意見も伺いたいと思いレポートした。
◎位置・経緯
今治西部丘陵公園は、新都市開発第2地区、現在分譲中の宅地・しまなみヒルズの北側に位置し、近見山南麓の丘陵地で、阿方から高地町にまたがっている。新都市開発整備事業の目玉の一つ・大規模スポーツ公園整備としてその計画がスタートした。この当初計画は、野球場、陸上競技場、体育館、プールなど主要な体育施設ほとんどを集めたものであり、今治市のスポーツ振興の拠点となるはずであったが、平成9年に行われた自然環境調査で、公園整備計画区域内に「オオタカ」の営巣が確認され、大幅な計画見直しを余儀なくされた。
総合公園に見直された公園計画の事業認可を平成12年度に受け、同年に用地買収着手、平成16年度に工事着手したが、新都市開発が合併時の選挙争点になったことから、平成18年度には、事業を一時休止して再度の事業計画見直しを行った。平成19年度に有識者等で構成される「今治西部丘陵公園整備計画検討会」を開催し、次のとおり、新たな整備計画案が市長に提言された。
・提言の基本コンセプト
貴重なオオタカをはじめ自然環境の保護と里山環境の保全・復元により、市民の誰もが憩いと体験を通じ、暮らしの潤いを実感できる公園作りを目標とし、「自然にいこい、体験を通じて、自然との共生を学び、里山の自然資源と環境を活かす公園づくり」と設定
・提言の基本方針
  (1)里山の自然を感じ、心が安らぎ元気がみなぎる公園づくり
  (2)里山の自然観察、オオタカ等の生息環境再生活動などを通じて、自然のちからを知り、学ぶことができる公園づくり
  (3)棚田の再生と作物栽培、竹加工、炭焼きなどのものづくりを通じて自然に働きかけ、育てる喜びを子どもから高齢者までが四季を通じて楽しめる公園づくり
  (4)さまざまなふれあい活動を通じて、人と人、人と自然の共生を深める公園づくり
この提言による整備計画案については、特に、里山環境の保全・復元は、荒廃していく中山間地の再生そのものであり、無理にここで行わなくても必要とされているところは他にいっぱいあろうが!!との声も大きい。
私も同感ではあるが、すでに用地買収済のこの公園整備は、このような方策しか無いのが現実であり、後述する教育プログラムなどと合わせて活用していくべきだと思っている。
提言による計画平面図
◎現状と今後の整備
総事業費70億円のうち用地取得費は約33億円で、そのほとんどが支出済みである。事務費等を含む工事費は約8億円が支出済みとなっている。
上の計画平面図中、集いの広場周辺は17年度までに造成が行われており、それまでに投資されたものが無駄に遊んでいる状態となっている。毎年4月には、法面に植生された芝桜がまばゆいばかりに咲き誇り、ピンクの海が広がっている。
整備が終わったところから順次開園する計画であり、上図の朱線で囲まれた区域・約11haについては、上述のとおり今すぐにでも開園すべきところではあるが、富良野自然塾体験学習プログラムを導入するための整備を行って、平成22年度中の開園を予定している。それに続く青線で囲まれた区域は、ほとんど現状のまま自然を利用する区域になるから、平成23年度以降ではあるが、そんなに先にならないうちに開園できると思っている。
それより西の区域は、隣接する新都市体験・自然学習施設用地の動向と合わせる必要があり、当分の間未定となる。
中央の芝生が「集いの広場」 並行する道路は「しまなみ海道」
◎富良野自然塾
富良野自然塾は、脚本家・倉本聰氏が塾長を勤めるNPO法人であり、環境教育事業を行っている。
平成17年に、富良野プリンスホテルゴルフコースが閉鎖されるのに合わせて、そこを昔の森に還す事業に取り組み、同時にそのフィールドを利用しての環境教育事業を始めた。環境教育プログラムは、「みどりの教室」、「裸足の道」、「石の地球」、「46億年・地球の道」で構成されており、最後に植樹作業を行う。
5月に、建設水道委員会で富良野自然塾の行政視察を行い、環境教育プログラムを体験した。
◎建設水道委員会行政視察報告
5月27日、富良野自然塾で環境教育プログラムの体験・視察を行った。最初に、塾長である倉本聰氏から環境教育の基本講義(緑の教室)を受け、つづいて、「裸足の道」、「石の地球」、「46億年・地球の道」を、フィールドディレクターの斉藤氏の指導のもと体験した。これらは全て今治西部丘陵公園に造られる予定のものであり、今治のものが着工される前に体験できたことは大変意義深いと感じた。
倉本氏の講義 空気がないと生きられないことを体験中
「裸足の道」は、さまざまな路面材が配置されている道を、パートナーの介助で、目隠しをし、裸足になって歩くものだが、小雨降る中で合羽を着ての体験となった。特に聴覚と足裏の感覚が研ぎ澄まされて、見たことのない大自然の中に踏み込んだような感じであった。
「石の地球」は、地球を直径1mに縮小したオブジェであり、同縮尺で月、太陽の大きさ・距離を表している。それらの微妙な関係を実感することができたし、我々が暮らしている大気圏の薄さに驚かされた。地球の程よい大きさと太陽からの距離、奇跡のような偶然が、多くの生命体あふれるこの星を生み出したことを教えられた。
裸足の道
石の地球 地球の内部構造も見ることができる
「46億年・地球の道」は、地球の誕生からの46億年を460mの道で表している。1億年が10mであるから、1万年が1mmとなる。産業革命後、人類が地球環境を大きく壊し始めてからの200年は、なんと、わずか0.02mmである。凍ったり、沸騰したり、いろいろな変動を長い時間をかけて繰り返して出来上がってきた環境を、地球の歴史上で言えば、ほんのわずかな瞬間に大きく変えてしまっている現代社会に対し、何とかしなければならないという気を起こさせてくれるものであった。
46億年地球の道 スタート
46億年地球の道 白いのは氷河期を表している
富良野自然塾のフィールドは、閉鎖されたゴルフ場の跡地であり、これを元の自然の返す取り組みから、倉本氏らの活動が始まっている。その一環として、環境教育プログラムの締めくくりに我々も植樹して終了となった。
場所を管理棟の部屋に移して、副塾長の林原氏と意見交換を行った。今治での取り組み方針や、雪のため冬季には閉鎖しなくてならない富良野から出て行くことの意義、取り組みを広げるためにもなんとしても成功させなければならないことなど、時間を忘れて語り合うことができた。
大きな収穫を得ることができたすばらしい体験・視察であった。
植樹作業 想像以上の悪質地盤
林原副塾長と意見交換
◎今後の運営
富良野自然塾環境教育プログラム受講料金は、大人3,000円、小中学生1,500円であり、今治でも同程度の料金になる見込みである。環境教育プログラム施設は、他の一般公園施設と同じであり誰でも自由に使えるが、フィールドディレクターによる講義を受けることが有料になる。
倉本聰氏のネームバリューを活用し、全国に情報発信することで多くの来客を期待してはいるが、富良野のような森を復元する目的が薄いだけに、簡単にうまくいくとは思えない。大三島少年自然の家と連携した活用なども考えている。
検討会の提言のとおり、市民の誰もが憩える場ができることを心から望みたい。
森きょうすけ
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