『水田耕作と地域づくり』
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◎令和の米騒動
昨夏におきた、日本人の主食の米が足りないという事態。毎年同じような割合で減り続けていた米の消費量が、インバウンドによる需要の増加などによって急増したからと農水省は言う。それまで年間消費量が10万トン程度減少しつづけていたものが、逆に10万トン増加したというデータが示された。しかし、これを信じろと言われてもかなり無理がある。
米が余り気味だったころは、一般に新米が出回るのは年が明けてからであった。それが、だんだん早くなり、令和6年産では収穫を待ちかねたように新米が市場に引っ張り出された。そのまま行けば、令和7年は盆前に在庫が底をつき、もっと大騒ぎになると思われたが、備蓄米の大量放出で、量的面では事なきを得た。このことから、近年は米の生産量が消費量を下回る状況が続いていたことが明らかになったと私は思っている。
金額面では、消費者向けの小売価格が過去最高水準で推移しており、このことが消費者の米離れに繋がってしまわないか心配である。生産者の立場から言うと、JAに出荷した際に支払われる仮渡し金が、令和6年産は令和5年産の1.6倍、令和7年産はさらにその1.6倍になり、私が高校生だった50年前の価格を初めて上回った。
令和7年産の価格が続いていくのであれば、私の経営規模でも米作専業で十分やっていける。しかし、現状では高価格があだとなって売れ行きが悪く、加えて、生産量が昨年より60万トン以上増えているため米卸売業者の在庫が膨れ上がっており、このまま推移すれば大暴落に繋がりかねないという。望むのは、生産者にとって翌年以降も再生産ができる水準で、消費者にも納得してもらえる価格で安定することである。
今回の米騒動に対して、政府(石破政権)は米を増産し、輸出することで国内需給バランスを保つとした。余るときは輸出し、足りないときは国内で消費するというのだが、そんなに都合よく高価な日本米を買ってくれる国があろうはずがない。高市政権に替わって、鈴木農水大臣は従来からの「需要に応じた生産」に舵を切りなおした。マスコミなどは一斉に「国民よりコメ業界を救うのか」と大ブーイングであるが、私は鈴木大臣に賛成する。(おこめ券のことは別)
今回の米騒動は、上述のように米の需給見込み判断を数年にわたって誤ってきたことによると思われる。高騰してしまった小売価格の対策は思いつかないが、備蓄米も底をつきかけたことであるし、これで需給バランスがリセットされたと考えて、今後、安定して適正価格が続くような農政運営を期待する。
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| 今年初めて作付けた「にじのきらめき」収穫 |
来季に向けて荒起こし開始 |
◎水田耕作と地域づくり
人口減少が進む中で、中心市街地を活性化し、住民を中心部に集めて行政の効率化を図るコンパクトシティ政策が各地で進められている。今治市においても同様であるが、周辺地域で暮らす人にとって、中心部に新たな住居を求めることは簡単にできることではない。現在周辺部に住む人のほとんどは、そのまま住み続けていかねばならない。
周辺地域の良いところは、豊かな自然環境と伝統的な地域コミュニティーであろう。この豊かな自然環境は、農作業、特に水田耕作によってもたらされている。農作業の一環として、地域内の除草や水路清掃などが行われ、また、水田そのものが治水機能を持ち、景観をかたちづくり、多様な生物をはぐくんでいる。
しかし、この農地が耕作放棄されると、一気に逆の影響を及ぼすようになる。また、放棄地の雑草処理によるトラブルなどで地域コミュニティーにヒビが入ったりもする。周辺地域にとって、農作業、水田耕作がいかに大切であるか理解していただきたい。
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| レンゲ咲く畝 ディスクロータリーで反転 |
ハンマーナイフモアで広場の除草作業 |
私は、以上のようなことから「地域づくりは水田耕作から始まる」と考えて農作業に取り組んでいる。現在の農業者はほとんどが高齢者(私も)で、私の地域でも、毎年のように耕作できなくなる農地が発生しているが、仲間と調整し合って耕作放棄地を増やさないよう努めている。
国の農業行政は、兼業農家など小規模経営者を切り捨てて大規模化し、低コストで持続可能な農業経営体を増やそうとしている。しかし、今治市のように大規模経営体があまりいない地域には、大規模化できにくい訳があることを理解しなければならない。小さい区画や変形の農地に大型機械を入れても、かえって効率が悪くなる。大規模化できないところを、その地域ごと切り捨ててしまっては、米は供給不足になってしまう。
私の地域のような小規模農家だけの地域でも、ある程度の安定した米価であれば農業を続けていける。兼業収入や年金と合わせた農家所得をもとにして、レジャー感覚で楽しみながら農業に取り組めば、地域づくりにも貢献できるし心豊かな人生にもつながっていく。小規模農家も大切にする農業行政が求められる。
もう一つ大切なことは、次世代を担う農業者を育てなければならない。若者の新規就農者がいればこれにこしたことはないけれど、小規模な水田経営では無理である。以前であれば、定年退職した元気な高齢者が地域農業を支えることができたが、定年延長されていくこれからはそれも難しい。
可能性が一番高いのは、兼業で休日農業をする若者だと思える。農作業のための有給休暇制度を設けるくらい思い切った政策があって良いと思える。水田耕作が地域を作っていくことに目を向けてもらいたい。
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| トラクター作業機を付け替えて効率UP |
自走式草刈り機で畦草刈 |
◎第3回JAおちいまばり美味いお米食味分析鑑定コンクール
JAおちいまばり米の食味コンクール。これは、米粒食味計を使って玄米中のアミロース、たんぱく質など食味につながる成分含有量を計測し優劣をつけて表彰するもので、3年目を迎えた。コンクールには「ひめの凛の部」と「全銘柄の部」がある。
私は、自分の作った米の食味データを得るために毎年出展していて、3年連続して全銘柄の部で優秀賞を受賞した。昨年と一昨年は「にこまる」、今年は初めて栽培した「にじのきらめき」で受賞することができた。出展したのは3回それぞれ別の場所で収穫したもので、作土の質も水源水質も違っており、データに現れる変化を期待したが、大きな違いは見られなかった。
愛媛県が育成したブランド米「ひめの凛」はJAに出荷する前に食味分析を受けることが義務付けられており、格付け検査で1等米に判定されたものがそのまま食味コンクールに出展される。私の場合は、カメムシの被害で2等米判定になったためコンクール出展対象外になった。(昨年も)
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| 優秀賞の賞状、トロフィー、景品 |
食味コンクール展示 11月30日イオンモール |
◎六甲山登山
10月25日(土)いつものメンバーで六甲山の山歩きに出かけた。行き帰りはオレンジフェリー船中2泊の条件で、鞍馬山、生駒山との3択で、軽い気持ちで選んだ六甲山。大阪南港から地下鉄などを乗り継いで阪急電車芦屋川駅へ。駅の外には山歩きの格好をした大勢の人だかりで、人気の高さに驚かされた。
とにかくなめてかかっていた。スニーカーでも大丈夫と思いきや途中から本格登山。登りの途中で下りもあり、ヒイヒイ言いながら歩くこと4時間で、標高931mの頂上にたどり着いた。持参したおにぎりなどの昼食を済ませ、雨天予報があることから有馬温泉に向けて急いで下り、銀の湯に入湯してから三宮経由、地下鉄などを乗り継いでフェリー乗船、翌朝帰宅するという充実した旅を体験できた。
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| 息が上がるくらいきつい |
こんな岩場もある |
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| 中腹からは万博会場も見渡せる |
標高931mの頂上 |
◎様々な受賞
今年は米の食味コンクールの他にも様々な賞をいただいた。
・JA波方町支店サマーフェスティバル夏果物品評会
1等賞 桃(あかつき) 3等賞 ゴーヤ、李(ソルダム)
・波方産業文化祭農産物品評会
2等賞 米(ひめの凛)、米(にこまる) 3等賞 里芋、柿、ピーマン
・全国保護司連盟理事長表彰
18年間の保護司活動を表彰していただいた。
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| 桃(あかつき) |
ゴーヤ |
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| 里芋(赤目) |
11月18日顕彰式典にて |
森きょうすけ
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