20111214 NO.3
◎金沢市
 金沢市は、人口約45万人の中核市で、歴史的観光都市である。もうすぐ新幹線が開通する金沢駅舎は大変立派で、それ以外にも再開発事業などで建設された高層ビルが林立し、人口規模以上に大都市の印象を受ける。それでありながら、路地々々には庶民の生活感が漂い、その代表格が近江町市場である。
近江町市場は、金沢市民の台所を支える庶民市場で、藩政時代から続いている。松葉ガニをはじめとする地元産の魚介類を売る店を中心に、青果店・惣菜店などが所狭しに並び、近年では、観光客も大挙して押しかけて大変な賑わいになっている。
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 歴史を重ね、密集した建物群が老朽化し、その対策などのため、昭和50年代後半頃からこの地域の再開発が検討され始めた。その後、前面の国道拡幅整備が外的要因になり、市街地再開発組合事業として再開発が行われ、平成20年度末に完成した。この再開発の中核建築物が「近江町いちば館」であり、その3階、4階部分を金沢市が買い取って、再開発事業に間接的な財政支援を行った。
photo-5  いちば館から見た前面国道

・近江町交流プラザ
 金沢市が買い取った3・4階フロアーは、「近江町交流プラザ」と名付けられ、まちなか学習と市民交流の拠点として整備された。
 4階は、戸籍証明や住民票等各種証明書を発行する「市民サービスコーナー」と、集会室、研修室などを備えた「まなびぃ広場」になっている。ここでは講演会、研修会、ヨガ、フラダンス、太極拳、茶会などが行われ、年間3万人以上が利用している。
 3階には「ちびっこ広場」と「食育広場」があり、子どものための空間になっている。ちびっこ広場には、それぞれ複合遊具を備えた乳児用と幼児用、二つのスペースが設けられている。乳児用スペース奥の保育室では乳幼児一時預かりが行われ、買物、仕事、通院などのときに利用されている。旅行者も利用できると言うことで、観光振興を考えるうえでの新たな着目点になった。食育広場では、「金沢こども料理塾」が年間50回開催されるほか、食育イベントや食育情報発信が行われている。
photo-6  乳児用スペース
photo-7  幼児用スペース

 事業費は、約11億8千万円(用地費9億円 工事費2億8千万円)で、まちづくり交付金が使われた。商業施設の中に設置されているため場所がわかりにくい短所はあるが、都会的に洗練されている。庶民市場とのコラボレーションが、金沢市そのもののイメージと重なり、良いまちづくりができていると感じさせられた。


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