20171121 NO.2
◎名寄市立大学
名寄市は、北海道の北部、稚内市と旭川市の間の内陸盆地に位置する人口約29,000人の町。毎年人口が1%近く減少している過疎の町であるが、4年制で収容定員690人の名寄市立大学を持っている。大学が市に及ぼす影響などを確認したくて視察させていただいた。

名寄市立大学の前身は、昭和35年に開学された名寄女子短期大学で、平成2年に男女共学化、そして、平成18年に4年制「名寄市立大学」となり、さらに平成28年に、残っていた短期大学部児童学科を4年制社会保育学科に改編して現在に至っている。

大学は栄養学科、看護学科、社会福祉学科、社会保育学科の4学科を擁する保健福祉学部のみで、現在籍者数692人のうち男子は116人という状況。平成29年度における受験倍率は2〜4倍程度。入学者の多くが北海道内からで、これに東北地方出身者を加えたものがそのほとんどになっているものの、四国、九州出身も数名おり、全国各地から集まっている。公立大学であり、授業料等の割安感が人気要因の一つになっている。

photo-3   名寄市立大学玄関
photo-4   ま新しい大講義室

市立大学があることによる経済効果は、学生、教職員、その家族合わせた約1,000人に対する人口を基本単位とする地方交付税交付金が1億円以上。生活にかかる消費額が10万円/人・月であれば、約10億円あまり。学内での物品購入・清掃委託料等が年間数億円とのことで、これ以外にも、学生アルバイトによる地元の企業活動など集計できないものもある。

経済効果以外にも、学生が生活することによる若年人口の増加、マチの活性化等、地方の小都市にとって、なくてはならない存在になっている。

一番気になるところの名寄市財政負担であるが、大学運営は授業料、入学金、その他学生納付金などと一般財源で賄われている。一般財源といっても、学生数を単位として算定される公立大学運営にかかる地方交付税交付金のみであり、名寄市の実質負担はないといってもよい。

今治市の獣医学部では、市は建設時の補助金は出すけれど、その後の運営費の負担をすることはない。割安な授業料になることはありえないが、既存の獣医系大学の受験倍率の高さを根拠とした大学運営計画になっている。はじめに書いたように、政治的な横やりの影響を受けることなく満杯の新入生を迎えたいものである。


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